28日に持病の悪化のため総理の職を辞任することを発表した安倍首相に、世界各国の首脳・要人が感謝のメッセージを発信しています。
その中でオーストラリアのモリソン首相のツイッターメッセージが感動的だということで、国内外から大きな反応を得ています。
Australia is thankful for the true friend we have had in Shinzo Abe as Prime Minister of Japan. His leadership, wisdom, generosity and vision have championed the cause of peace, freedom and prosperity in our region and the world more broadly. pic.twitter.com/GCdRo371ru
— Scott Morrison (@ScottMorrisonMP) August 28, 2020
投稿は4つに分かれていて、それぞれに安倍総理への思いが込められた熱い文章になっています。
これを4つづつの段落で見ていきたいと思います。
2国間の友情について
まずは一つ目です。
【訳文】オーストラリアは日本の首相である安倍晋三氏という、真の友人を得た事に対して感謝しています。安倍首相のリーダーシップ、知恵、寛大さ、そしてビジョンは、アジア太平洋地域や世界の平和、自由、繁栄の大義を、これまで以上に広範囲にわたって支えてきました。
一番最初のツイートから熱い思いが綴られています。
モリソン政権は日本と歩調を合わせて対中国包囲網を構築しているため、特に「平和、自由、繁栄」の思いを言葉が出てくるのだと思います。
文法・語法で見ていくと、
Australia is thankful for the true friend we have had in Shinzo Abe as Prime Minister of Japan
に注目したいところ。
分解すると、
Australia is thankful for=~に対してオーストラリアは感謝している
for the true friend we have had in=~という真の友人を得たことに
Shinzo Abe as Prime Minister of Japan=日本の首相である安部晋三氏
となります。
感謝する⇒真の友人を得たことに⇒安部首相
というように、先に言いたいことを出してきて、その理由を説明する英語の特徴がよく出ていますね。
青字の「we have had」は「have+過去分詞」の現在完了形で「(今に至るまで)~だった」という語法になります。
最後に単語を出しておきます。
is thankful for=感謝している
champion=支持する
cause =正当な理由、大義
more broadly=これまで以上に広範囲に
謙虚さと誠実さ
2つ目の英文です。
【訳文】オーストラリアと日本が、かつてないほど親密になった理由、それは安倍首相が示してくれた謙虚さと誠実さによるところが多大です。ダーウィン戦没者慰霊碑で、空襲の犠牲なられた方々を偲びながら、安倍首相と並んで花輪を捧げた事を決して忘れる事はないでしょう
2018年11月に安倍総理がオーストラリアを訪問した際の出来事を述べられています。
日本軍による空襲で犠牲になった方々の慰霊碑に安倍首相も献花し共に祈りを捧げたことで、両国のつながりはより深くなったということ。
では文法と語法を、英文を分解しつつ見ていきます。
Australia and Japan have never been closer
「have never been」とつくと普通は「決して~してこなかった」という否定文になりそうですが、ここでは反語的に「これまでになかったくらいに親密に(closer)」という意味になっています。
this is significantly due to~
「due to」は「~によるもの」という表現。because(なぜなら)」に近い意味を持ちます。
the humility and sincerity Shinzo Abe has displayed.
その理由は(due to)の続きで「謙虚さと誠実さ」。
ポイントは「謙虚さと誠実さ」という単語を先に立てて、続く「安部首相が示した」と説明している語法です。
英語独特の「言いたい言葉を先に出して、続く文章でその流れを説明する」を端的に示した語法になっています。
日英の違いを訳文で示すと、
【日本語】
安部首相が示してくれた、謙虚さと誠実さ
【英語】
謙虚さと誠実さ、それを安部首相が示してくれた
的なニュアンスの違いです。
続く英文です。
I’ll never forget laying a wreath side by side with him at the Darwin Cenotaph
I will never forgetで「私が決して忘れないだろう」で、続くlaying~は、
「forget~ing」(~することを忘れない)の流れで「~ing形」に変化したものです。
もとのフレーズは「Lay a wreath」で「献花する」です。
side by sideは「横に並んで」、with him「安部首相と一緒に」、at the Darwin Centaph(ダーウィン慰霊碑で)となります。
as we remembered those killed in the Japanese bombing raids on Darwin.
続く上の英文は、本来は直前の英文と切れていません。
ただ「as」という「説明」を表す接続語を挟んでいるので、あえて分けてみました。
asは幅の広い言葉で「~のように」とか「~として」「~だから」「~しながら」という意味を持っています。
状況や使い方でいかようにも変えられるので、結構多くの英文や英会話で出てきます。
ここでは「~しながら」という意味をとっています。
as we remembered「私と安倍首相は思い出しながら」となり、続くthose kiiled~で「~死んだ人を」と定義づけします。
thoseは誰かを示すときに使われる用語で、多くは間に「who」が省略されています。
ここでは、
as we rememberd those who killed~
となっているはずで、whoは文字通り「誰」を説明する代名詞になっています。
では単語のまとめです。
due to=~という理由で
humility=謙虚さ
sincerity=誠実さ
laying a wreath=献花する
安部首相は友人であり、政治の師
【訳文】こうした行為は大いなる強さと高潔さを必要とするものでした。安倍首相は同じ首相として、友人として、同時に政治家としての師でもあり、そんな彼が首相の座から離れてしまう事を非常に寂しく思います。オーストラリアへの特別な友情と貢献に対し、感謝を申し上げます
最初のThis tookは「これは必要とした」と訳しました。
takeは「取る」「かかる(費用や時間)」と同様に「必要とする」意味を持ちます。
直前のツイート文でジョンソン首相は「日本軍の空襲で犠牲になったダーウィンの慰霊碑に共に献花を捧げた」とあるので、日本の指導者がかつて自国が与えた犠牲者に祈りを捧げることへの「意味」を表したものでしょう。
それを成し得た安倍首相がもつ、
great strength and nobility(偉大なる強靭さと高潔さ)
だと表現しているのです。
I will miss him greatly in the role of PM as a friend and a mentor.
I will miss greatlyは「私はすごく寂しい」で、続く「in the role of」で「~という役割の中で」が出てきます。
PMは「Prime minister(首相)」の省略形なので、同じ首相という役割の中で「安部首相が辞任することが寂しい」という意味をもちます。
ではどういう具体的に意味で寂しいのかというと、先ほど出てきたas「理由を説明する」接続詞以下で述べています。
as a friend and a mentor
「(政治家としての)友人として、師匠として」になります。
個人的にではなく、in the role of PM as(首相という役割において~として」と改めて言及しているところに、モリソン首相の謙虚さと誠実さがよく表れていますね。さらに安倍首相がいかに政治家として敬愛されていたのかが、よく分かるくだりだと思います。
We thank him for his special friendship and his service to Australia.
We thank him forで「~に対して我々は感謝する」
his special friendship and his service to Australiaで「安部首相のオーストラリアへの特別な友情と貢献に」と書いてくれています。ありがたいですね。
では単語チェックです。
strength=強さ
nobility=高潔さ
in the role of=~という役割の中で
mentor=師匠
service=貢献
安部首相への感謝の意を込めて
最後の英文です。
【訳文】(妻の)ジェニーと私は、晋三と昭恵夫人のご健勝をお祈りしています。安倍首相は日本国のために全力を尽くし、日本と世界のために、心から誇れる遺産を残してくれました。
最後の最後で胸に迫る名文を残してくれています。
このラストの2文だけで結構、涙腺が緩んでいますから。
英語も誠実なモリソン首相らしく、心のこもった内容になっています。
まず最初の、
Jenny and I wish Shinzo and Akie well, and all the best for his health.
で、モリソンご夫妻から安倍首相ご夫妻への温かい言葉がかけられます。
「wish+人+well」で「~が良くなることを祈る」の意味がこめられます。
続く「and all the best for his health」で「首相の健康にとって」となります。
全体的に定型に近いですが、今回の辞任の理由が持病の悪化によるものだということで、最後の「his health」に気遣いの意味が込められているが心憎いです。
最後の一文は少し長いので、3つに分けてみていきます。
Abe has given his all to the service of his country
Abe has given his all to~で「彼の全てを捧げてきた」になり、the service of his countryで「日本国への献身」が続きます。
つまり「安部首相は国家のために全力を尽くしてきた」です。
さらに、
and left a legacy for Japan and the world that he can be truly proud of.
and「そして」が入り、left a legacyで「遺産を残した」、何に対してかというと「for Japana and the world」(日本と世界に)。
最後にthat(つまりそれは)と説明が入り、he can be truly proud ofで「安部首相が真に誇りに思う」と述べているのです。
まとめると、
安部首相は日本のために全力を尽くし、心から誇りに思う遺産を日本と世界に残した
となります。
いい文章ですね!
では最後の単語チェックを。
give one's all to the service of=~への献身に全てを捧げる
left a legacy=遺産を残した(leftはleaveの過去形)
can be truly proud of=心から誇りに思える
では最後に全文の訳を紹介します。
オーストラリアは日本の首相である安倍晋三氏という、真の友人を得た事に対して感謝しています。安倍首相のリーダーシップ、知恵、寛大さ、そしてビジョンは、アジア太平洋地域や世界の平和、自由、繁栄の大義を、これまで以上に広範囲にわたって支えてきました。
オーストラリアと日本が、かつてないほど親密になった理由、それは安倍首相が示してくれた謙虚さと誠実さによるところが多大です。ダーウィン戦没者慰霊碑で、空襲の犠牲なられた方々を偲びながら、安倍首相と並んで花輪を捧げた事を決して忘れる事はないでしょう。
こうした行為は大いなる強さと高潔さを必要とするものでした。安倍首相は同じ首相として、友人として、同時に政治家としての師でもあり、そんな彼が首相の座から離れてしまう事を非常に寂しく思います。オーストラリアへの特別な友情と貢献に対し、感謝を申し上げます。
(妻の)ジェニーと私は、晋三と昭恵夫人のご健勝をお祈りしています。安倍首相は日本国のために全力を尽くし、日本と世界のために、心から誇れる遺産を残してくれました。
まとめ
他の国の指導者や要人が送ったメッセージの中でも、モリソン首相のそれは特に心がこもっていて、安倍総理への気持ちが伝わって来るようです。
オーストラリアは国家として中国との貿易を重視してきましたが、昨今のコロナや米中対決の流れを受け、急激に反中方面に舵を切っています。
国内で中国による「静かな侵略」が行われているという内容の書籍が出版されて話題を呼んだこともあり、そうした流れを受けてのモリソン首相の安倍首相への言葉、信頼があったうえでのツイートだったんだとも思います。
国家としては別にして、一個人としてすごく温かい文章だと感じました。
ぜひこれからも日本とオーストラリアが良い関係を続けられたらと思います。
ビジネス英語&TOEICの自主学習アプリレビュー
-
-
スタディサプリEnglish「ビジネス英語コース」体験レビュー
続きを見る
-
-
スタディサプリEnglish「TOEIC対策コース」体験レビュー
続きを見る